過去の診療日記から痛風の原因・治療を抜粋しました

2004年4月12日(月)
おやじ痛風?

     今日は月曜日の朝診療所の待合室はお子様からお年寄りでがやがやしています。
     何やらそこに わがままおやじの姿もありました。

いちご 「わがままおやじさん、診察室1番へお入りください」
おやじ 「イテッ、アイテテテ、まったくイテテテ」
いちご 「おじさん、今回はどこが痛いんですか?」
おやじ 「足、足の親趾の付け根が、イテテテ、痛いんだ」

先生  「痛そうですね、赤く脹れてるし、レントゲンで見てみましょう、技師さん、右母趾MP関節2方向でお願いします」
技師  「わかりました、足カッショ?」
いちご 「そう、カッショ」
技師  「真似しないでちょうだい、カッショ」
おやじ 「どうでもいいけど、痛いカッショ」
技師  「まったく、皆で真似しないで、カッショ、おじさん、レントゲン撮るカッショ」
おやじ 「お願いします、カッショ、イテテテ」

     レントゲン室でレントゲン撮影を終わった、わがままおやじが出てきたと同時に

いちご 「わがおやじさん、診察室にお入りください」
おやじ 「なな、なんだよ、今レントゲン撮り終わったばかりなのに、もう呼ばれちゃった。どうなってんだよ」
いちご 「おじさん、この診療所はこんな、田舎にあるけど、設備はどんどん新しい機器が導入されているのよ」
おやじ 「でも、撮り終わって、すぐ呼ばれるところなんかないよ」
いちご 「そうでしょう、うち(戸狩診療所)にはデジタルのレントゲンがあるのよ、専属の優秀な?技師さんもいるしね、とにかく先生が患者様のためになることには、どんどん、新しい機器を導入しちゃうんですよ、電子カルテもそうだし、私たちの知識じゃついていけないのよ」
おやじ 「おら、青中だで、でも毎回、びっくりだ、スゲェ〜」


先生  「まあまあ、先に診察しましょう、レントゲンを見てください」・・・机のうえの液晶ディスプレイをマウスで操作しながら
おやじ 「たまげたぁ、おらのレントゲン、テレビにでてるで、いちごちゃん」
いちご 「モオ、いいから先生のお話聞いてください」
おやじ 「ハーイ、お願いします。でもスゲー」
先生  「おやじさん、これ見てください、ここです」・・・右母趾MP関節を、マウスで拡大して
先生  「関節の部分が白くなっていますよね、さらに骨の、ところどころが抜けたみたいになっていますよね、骨のエロージョンが見られますね」

おやじ 「エレベーター?」
いちご 「エロージョン」
先生  「おやじさん、痛風だね、これは」
おやじ 「つ・う・ふ・う・?痛風って、あの痛風かい?」
先生  「そうです、あの痛風です」
おやじ 「なな、何でおら、痛風なんだぁ、おら、青やまだでぇー」・・・すこし大げさですね
先生  「いい機会だから、今回は痛風についてお話しましょう」

2004年4月13日(火)
おやじ痛風 PartU
   
     おやじは右足のおやゆびの付け根が脹れて痛いので診察を受けています

先生  「お話の前に採血して、尿酸と腎機能、肝機能、炎症反応等調べておきましょう」
いちご 「おじさん、こちらへどうぞ」・・・処置室へ
おやじ 「おら、採血やだなぁ、いちごちゃん」
いちご 「動かないでくださいね、はい、チックとしますよ・・・はいお終いです、揉まないように押さえときましょう」

よく、 採血した後揉んでいる方を見かけますが間違いです、圧迫しといてください

     しばらくして、検査の結果がでました。

いちご 「わがままおやじさん、診察室へお入りください」
おやじ 「フワーイ、よく寝てた、アタタタ」
iいちご 「はい、どうぞ」・・・診察室のドアを開けてわがままおやじを、向かいいれます。
先生  「やはり、痛風、高尿酸血症ですね」
おやじ 「高野山で小便?」
いちご 「高尿酸血症」
先生  「尿酸値が8.1と高めです白血球10600、CRPもあがっていますね、腎機能や肝機能は特に異常ありません」
おやじ 「おら、なんで痛風になるんだい?」

先生  「痛風発作の原因は尿酸という物質です、尿酸はからだの中にも一定量あって、血液などの体液に溶けて循環し、尿の中に濾し取られて捨てられます。何らかの原因で血液中の尿酸の濃度が上昇して飽和濃度を越えると、溶けなくなった尿酸は結晶になります。尿酸の濃度が高い状態が続くと、この尿酸塩の結晶が関節の内面に沈着してきます。痛風の発作は、尿酸塩に対してからだの防御機構である白血球が反応し、攻撃する時に起こります」

先生  「尿酸塩が関節に溜まると痛風発作になりますが、他の臓器にも溜まります。なかでも腎臓には尿酸が溜まりやすく、痛風発作のある人は腎機能に注意が必要です。さらに、痛風の患者さんでは心筋梗塞や、脳血管障害など成人病を合併する割合も高いのです。痛風発作の激痛は治療が必要だ、という警告と考えるべきでしょう」
おやじ 「おらも、治療が必要かい?」
いちご 「今聞いてたでしょう」
先生  「必要ですね、おやじさん」
おやじ 「ところで、尿酸ってなんだい?」

先生  「尿酸は炭素、窒素、酸素、水素の分子から出来た化学物質で、プリン体と呼ばれる物質のひとつです。プリン体には多くの種類があって、それぞれが多彩な作用を持っていますが、それらが最終的に分解され、尿の中に捨てられる形になったものが尿酸です」

先生  「尿酸の素になる物質は、DNAやRNAとよばれる核酸やATP(アデノシン三リン酸) という生体エネルギー物質ですこのような材料の老廃物として尿酸が作られます。この尿酸の産出が多くなったり、排泄が低下すると尿酸は体内に蓄積し、痛風を起こします。要するに、尿酸はプリン体の老廃物で処理問題がうまくいかないと痛風になるわけです」

おやじ 「おら、プリンでもプッチンプリン好きだ」
いちご 「わたし、焼きプリン大好き」
先生  「二人とも、頭の構造一緒なんだね」

     二人にはちょと難しいようだった。  

2004年4月14日(水)
おやじ痛風PartV
     
     前回まで、痛風の原因がプリン体であることについて難しい説明をしてまいりました。
     今回はその予防や治療についてお話いたします。

おやじ 「おら、あんまりプリン食べないんだけどな」
いちご 「そのプリンじゃないっての」
おやじ 「焼きプリンのことかい?」
いちご 「おじさん、その言葉、忘れて、お願い」
おやじ 「おら、青中だ、忘れっこねえ」

先生  「まあいいです、お話聞いてくださいね、プリン体は核酸の原料です、 核酸は分解されてプリン体ができますが これはヒポキサンチンという物質を経て尿酸になります。 このように分解された尿酸は 最終的に体外に排泄されるという仕組みになっています。 つまり尿酸とは 細胞の最終産物と言うわけです」
おやじ 「尿酸は、細胞のウンチみたいなもんだな」
先生  「まあ、そう理解してください」

先生  「プリン体の分解からできる尿酸は最終的に腎臓から尿へと 腸から便へと排泄されていきますが、一定以上に血液中に増えると 尿酸値が上がり その結果高尿酸血症をおこしてしまいます」
おやじ 「なんで、その尿酸が溜まると痛いんだい」
先生  「尿酸は水に非常に溶けにくく そのため体内で結晶化して悪さをします」
おやじ 「尿酸は、おしゃれさんだな、化粧するなんて」
いちご 「結晶化、お化粧じゃない」
おやじ 「怒るなよ、いちごちゃん、わざと、ボケただけだねか」
いちご 「・・・嘘ばっかり」

先生  「痛風の激痛は この針のように尖った結晶化した尿酸が血液中に増え 神経などを刺激することが原因で起こりますが この結晶化した尿酸は人体にとっては異物なので白血球によって退治されるのですが 針によって逆に白血球が破壊され それによって体の様々な障害が起こることに繋がると言われています」
おやじ 「尿酸って、針もって悪さするんだな」
先生  「痛風の激痛は このような危険な状態を知らせているわけです」
おやじ 「イテテテ、尿酸の野郎めまた針で刺しやっがた、イテテ」

先生  「治療ですが、 第一に気をつけることは、食べすぎに注意です、高尿酸血症のひとは 肥満者が多く 肥満を招いたエネルギーの過剰がなんらかの形で 尿酸の代謝に関わっているものと考えられています」
おやじ 「おら、そんなにいっぱい食べてねえで」

先生  「 高尿酸血症の人は 肉や魚に片寄った食事をしている人が多いのも特徴で このような場合 芋類・野菜・海藻・キノコ類などを適度に取り入れたバランスの良い食事を心掛けることが必要です。 バランスの良い食事は 合併症となる動脈硬化や腎臓病の予防のためにも必要です」

先生  「 高尿酸血症では 腎臓結石から腎臓を壊す危険があるので それを避けるために尿をアルカリ性にして溶かす必要があり そのためには野菜や果物を十分摂る必要があります」

2004年4月15日(木)
おやじ痛風PartW
     
      痛風についてだいぶいろんなことがわっかってきました。
     今回は食事や、治療について説明いたします。

いちご 「おじさん、一人暮らしだから、食事が偏ってるんじゃない」
おやじ 「おら、3食、きちんと食べてるで」
いちご 「お酒やビール、毎日飲んでるでしょう?」
おやじ 「毎日なんか飲んでねえよ、1週間に1日は飲まない日あるでぇ」
いちご 「それは、ほとんど毎日って言うの」

先生  「とにかく、食事や生活で気をつけることについて説明しましょう,その前に代表的な痛風の症状を説明しときます」
先生  「痛風結節の形成は通常発症して約10年後に合併しておこります。結節は関節滑膜や軟骨下の骨、肘頭滑液包、アキレス腱や膝蓋下、前腕伸側皮下、関節周囲にできます。耳の軟骨は結節の好発部位に入れられていますが実際にはさほど多くありません」

先生  「合併症として、痛風結節、特殊な例では、鼻軟骨、舌、声帯、大動脈、心弁膜、心筋にできることがあります。痛風腎 、慢性痛風では蛋白尿、尿濃縮能の低下、などで尿毒症等の合併症を来たすこともあります、尿酸結石や糖尿病、心臓や脳の動脈硬化症、高中性脂肪血症は痛風で高頻度に合併します」
おやじ 「痛風って、怖い病気なんだな」
先生  「そうなんですよ、 痛風の基礎となる(高尿酸血症)を改善しないと 心臓病や腎臓病などの合併症をおこす恐い病気で これを防ぐためには運動などの生活改善と共に食生活の改善が必要です」

先生  「また、女性ホルモンとの関係も考えられており それは 女性ホルモンが尿酸の尿中排泄を促す働きがあるため、女性は 閉経後に痛風が発症するということが言われていたのですが、最近では若い女性にも痛風が増加しています、原因はストレスや無理なダイエットによる「無月経」の増加によるのではないかと考えられています。 その結果痛風が増えているのではと言われています」
おやじ 「いちごちゃんには、ダイエットもストレスも関係ないからいいな」
いちご 「黙って聞いていなさい」

先生  「最近では 薬の開発により(食事によるプリン体の制限は必要ない)という考えもありますが 日常プリン体を多く含む食品ばかりに片寄った食事は好ましくありません。 食品に含まれる(プリン体)は水溶性で 料理するときに水中に溶け出す性質があるので肉や魚は茹で汁を捨てることにより、かなりプリン体を減らすことができます。 肉を焼いたあとの(肉汁)は 料理に使用しないようにしたほうが良いでしょう。 他にも (だし)に使用される旨味成分の(イノシン酸)もプリン体の一部なので 調味料を使う時には注意が必要です」

おやじ 「料理がしにくくなるなぁ」
先生  「 ラーメンのスープには 豚骨や鶏がらが使われていますのでスープは飲まないようにしましょう」
いちご 「私、ラーメン大好き、特にスープが好きなのに」
おやじ 「美味いものは、皆だめだねか」

先生  「アルコールは尿酸値を上昇させるので注意が必要です、特にビールはお酒の中でも(プリン体)含有量が多く エネルギーとプリン体の両方を高めることになります」
おやじ 「おらの好きなものばかりだ」

先生  「だから、痛風になったんでしょ、あとは積極的に水分を摂取すること、季節を問わず尿が一日2リットル以上になるようにすることが理想ですが、毎日2リットル以上の水分をとること。ウォ−キングなどの有酸素運動は尿酸値を上げず、痛風の人に多い高血圧などの合併症にも有効です」
おやじ 「頑張ります」

     今回の痛風については、少し詳しすぎましたね、次回からもう少し面白おかしく書くよう努力いたします



痛風 高尿酸血症

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