変形性膝関節症
2004年3月15日(月)
わがままおやじ 変形性膝関節症 カッショ、カッショ

     診療所の待合室の右膝をさすりながら痛そうな表情のわがままおやじがの姿があった。

技師  「わがままおやじさん、レントゲン室へどうぞ、カショ」・・・技師本人は気がついていないが、「カッショ」という、言葉がよくでる。
おやじ 「いて、いでで、おら、膝んぼいてぇ〜。何でだい?技師さん」
技師  「はい、カッショ。動かないでください」・・・もくもくと自分の作業を続ける。
おやじ 「いでで、動くなって言ったって・・・いてててて」
技師  「はい、撮るカショ、しっかり、息を止めてください。カッショ」
おやじ 「息、止めたら死んじゃう。いでで」・・・おやじは、何とか技師さんに、相手にしてもらいたいらしい。
技師  「おねがい、カッショ。動くと、いいレントゲン写真が撮れないカショ」
     
     なかなか言うことを聞いてくれない患者様が多くて技師さんも、たいへんです。そこへ、いちごがやってきて。

いちご 「おじさん、少しの間、うごかないで」
おやじ 「いちごちゃん、おら、せつねぇや。いててて」
技師  「はい、もう一枚レントゲン撮るカッショ。はい、息をとめて、・・・はい楽にするカショ。・・・はい。おつかれさま、カショ」
    
      コンピュターの前でおやじのIDを入力して
技師  「レントゲン、送ったカッショ」・・・デジタルレントゲン(FCR)のため、すぐ、診察室で確認することができる。
いちご 「わがままおやじさん、診察室1番へどうぞ」・・・待合室の椅子に座るや否や。
おやじ 「もう呼ばれた。休む間もねえや。いででで」

先生  「今日はどうしました?おやじさん」
おやじ 「今まで、少しは右膝痛かったんだけど、今日の朝、急に階段の下りで痛み出したんだよ。いてて」
先生  「う〜ん、レントゲンでは、初期の変形性膝関節症ですね。動かし始めが痛いですよね?」
おやじ 「そうなんだ、座っていて、立つときに特に痛いんだ。少し腫れてる気がするし」

先生  「診察しますね、ベットに横になってください」
おやじ 「こ、こうかい?」・・・横向き(側が位)になって、訳もなくポーズをとるおやじであった。
いちご 「おじさん、上向き、仰向け。変なポーズはしなくていいの」
おやじ 「おら、青山だ。ベッドに横になれって、先生言ったで〜」・・・よくあることである。
      一通り診察して
先生  「おやじさん、やはり変形性膝関節症ですね」
おやじ 「変体性缶詰ショウ???」
いちご 「????・・・」
先生  「変形性膝関節症とは、膝関節のクッションの役目をしている軟骨のすり減りや筋力の低下が要因となって、膝の関節に炎症が起きたり、関節が変形したりして痛みが生じる病気です。中高年の方に多い病気です。年齢とともに増加します」
おやじ 「なんで、おら、そんな病気に成ったんかい?」
先生  「じゃあ、今回はOA ,変形性膝関節症について説明しましょう」
     
2004年3月16日(火)
変形性膝関節症 PartU

おやじ 「いでいでいでで、おら、膝痛てぇ〜」
先生  「今回は、膝のOA 変形性関節症についての説明です。いいですか?」
おやじ 「OA?、おら、青中OBだで」
いちご 「何言ってるんですか、OA,」
おやじ 「OA〜OA〜オエオエェ〜・・・チャンピオン・・・」
     「ニッポン!チャチャチャ!」
いちご 「ふざけないでください!!。サッカーじゃないです」

先生  「そろそろ、話してもいいですか?」
おやじ 「しゅいましぇん・・・シュン」
先生  「初期の症状には朝、膝に違和感を覚える朝起きて歩き始めた時の違和感がもっとも早い症状です。ただ、症状の進行は人によって様々で膝に力がかかる動作で痛みがでることもありますが初期の段階ではこの痛みは、しばらく休むと痛みおさまることが多いです」

先生  「 中期になると症状が簡単には治らない初期症状を放置しておくと、だんだん膝が完全に曲がらない、伸びきらない状態が進み、正座やしゃがみこむ等の動作が苦痛になってきます。階段の上り下り、特に下りがつらくなります。膝の周辺が腫れたり膝に水がたまって膝が張って重くだるい感じもでてきます。膝の変形がひどくなり膝に力のかかる動きをするとコリコリ、ガリガリといった軋轢音が出るように感じるようになります」

先生  「末期はさらに痛みがひどくなり、この時期になると日常生活に支障が起こるほどの痛みになります。そのため社会活動が思うようにできなくなります。活動範囲が狭まり、外界からの刺激が少ない生活になるとストレスがたまり、うつ状態になりがちです。高齢者の中にはこうした生活で、ボケ始めてしまう人もいます。外見的にも関節の変形が目立ち、この時期になると骨の変形が相当進んできます」

おやじ 「おら、どのへんだい?」
先生  「まだ、おやじさんは、初期の変形性膝関節症ですよ」

先生  「変形性膝関節症は(一次性、二次性)のもがあります。多くは、筋肉の衰えや肥満、無理な動作など多くの要因が絡み合って膝への負担となり、膝の関節軟骨がすり減って発症してきます。このように明確な原因が特定できないものを(一次性変形性膝関節症)といい、 一方、けがや病気など原因となるものがはっきりとしているものを(二次性変形性膝関節症)といいます」

先生  「発症・悪化要因について、これまでのところ女性、肥満、O脚については変形性膝関節症との関係があると言われています。特に日本人ではもともとO脚の傾向があり、膝の内側により負担がかかりやすくなるため、日本人の変形性膝関節症はその90%ちかくが膝の内側により強い変形が見られます」

おやじ 「そういえば、おらも、いちごちゃんもO脚だ」
いちご 「おじさんは、がに股でしょう」
先生  「まあ、似たようなもんだね」
いちご 「モォ〜先生まで!」


2004年3月17日(水)
変形性膝関節症 PartV

     変形性膝関節症の原因に肥満とOl脚が深い関係にあることを聞かされたわがままおやじであった。

おやじ 「おら、そんなにO脚かい?」
いちご 「がに股、おじさんのは、がに股」
おやじ 「何言ってんの〜、おおちゃくなのは、いちごちゃんでしょう」
いちご 「おおちゃく、じゃなくて、O脚、あれ?」
おやじ 「や〜い、自分でO脚って言っちゃった」
いちご 「モォ〜、変なことに頭使わずに、もっと大事なことがあるでしょう」

先生  「二人とも、似たようなもんだけど、病気の話続けていいですか?」
二人  「は〜い。シュン」

先生  「一度すり減ってしまった関節軟骨は、もとどうりに修復されることはありません。ですから、変形性膝関節症の場合は痛みをとり、膝が完全に曲がりきらない状態や、伸びきらない状態を改善して膝の機能を高めることを目標にして治療が行われます」

先生  「治療方法は症状の進行度や痛みの程度によって異なりますが、薬物療法、温熱・冷却療法、運動療法の3つの療法が基本となっています。これらの治療でも痛みが緩和されない場合には外科的療法を適応します」
先生  「薬物療法んには、飲み薬と外用薬があります。変形性膝関節症で処方される薬はいろいろありますが、病気そのものを治すためのものではなく、あくまでも対症療法として、炎症を抑え、痛みなどの症状を軽くして回復を助けるためのものです」

先生  「薬は正しく服用することが大切です。副作用があるからとか、飲んでも効かないからと勝手に判断して飲むのをやめたりすれば治療の効果は期待できません」
先生  「外用薬 塗り薬など 作用部位が局所に限られているので、長期にわたって使用できますが、 身体の奥まで効果が届きにくいです」

先生  「一般的に変形性膝関節症のような慢性の疾患の場合は患部を温める温熱療法が行われ、膝が熱っぽく腫れているような急性の痛みには冷却療法が行われます。家庭で行える温熱療法には、お風呂に入って患部を温める方法や温湿布やホットパックを使って暖める方法があります。また、日ごろから患部にサポーターを当て冷やさないようにすることも大切です。ただし、最初は自分の判断で行わずに、医師によく相談してから始めるようにしてください」

先生  「痛みが強いとき関節内注射も効果的です。 ヒアルロン酸ナトリウム剤は関節液の成分で、粘りけがあり関節の滑りを良くします。数回繰り返すうちに痛みがやわらぎ、関節の動きもよくなります」

おやじ 「おら、薬はきらいだ。貼り薬はかぶれる。注射は痛いからヤダ」・・・このような患者様が多くいらしゃいます。

先生  「では、運動療法しかないですね。運動療法の効果は症状の緩和です。運動をすることによって血行をよくし患部を温めて痛みを軽減させるほか、関節の動きをスムーズにする効果があります」
おやじ 「おら、運動は面倒だ。でも痛てんだで、何とかしてくれや」
先生  「あれはだめ、これはいやだ、と言われると治療のしようが無いですね。私は神様じゃないですから、我慢するしかないでしょう」
いちご 「これだけ丁寧に、説明を聞いたのにどうしようもないじゃない、おじさん」
おやじ 「でも、痛てんだで」

注)いろんな治療法を説明してもどれもいやだと、おっしゃられるのに、何とかしろとおっしゃられます患者様が最近多くなったような気がします。毎日考えさせられる今日このごろです。

五十肩 肩関節周囲炎
2004年3月26日(金)
アイタタタッ、五十肩

     
またまた、いつものように診療所の待合室にわがままおやじの姿があった。
なにやら、左の肩が痛そうです。

いちご 「わがままおやじさん、診察室1番へお入りください」
おやじ 「アイタタタ、腕、挙がんねぇ。イテテテ」
いちご 「どうしたの?おじさん」
おやじ 「アイタ、アイタタタ、肩、左肩痛くてどうしようもねんだ。何とかなんねんかい、先生」

先生  「いつから痛くなりましたか?」
おやじ 「朝、朝痛くて目が覚めたんだよ。イテイテテ、腕の置き場がねんだ」
先生  「だいぶ、痛そうですね。診察させていただきますよ。はい、前のほうに腕を挙げてください」
おやじ 「イテイテテテ、ここまでしか挙がんねえ、アタタタ」
先生  「はい、今度は横に挙げますよ」
おやじ 「イテッ、ここまでだ、先生」
先生  「はい、つぎは、・・・・・・・・」・・・いろんな角度から、診察をして。

先生  「おやじさん、これは、五十肩ですね、今朝、だいぶ冷え込んだでしょう」
おやじ 「五十肩?、おら、56歳だで。おら、そんなに、若いんかい?」
いちご 「何言ってるの、おじさん。年のこと言ってるんじゃないですよ」
おやじ 「先生おらのこと、50って、言っただねか。なあ、先生」

先生  「ハハハッ、さすが、おやじさん、いいところに気がつきましたね」
先生  「皆さんそうお考えの方多いんですよ。正式には肩関節周囲炎や癒着性関節包炎などが五十肩に相当する名称です」
おやじ 「肩ロースでシチュウ?郵貯で簡易保険?。なんだ、そりゃ?」
いちご 「ウフッ、相変わらずうまいこと言うね」
おやじ 「うるへぇ〜、おら、青山だ。ほっとけ、イテテテ」

先生  「まあまあ、五十肩でいいですよ、五十肩とは、主に50歳以上の男女に起こる肩関節の痛みと運動制限を伴う病気です」
おやじ 「初めっから、そういってよ、先生。いちごちゃんに何か言われると超〜むかつくぅ」
先生  「今回は、五十肩(肩関節周囲炎)について、お話しましょう」

2004年3月27日(土)
五十肩 肩関節周囲炎 PartU

     左肩が痛くて診療所に来ているわがままおやじが診察室で先生の診察を受けています。

おやじ 「イデェ〜イテテテ、おら、肩痛てぇ〜何とかしてくれや、いちごちゃん」
いちご 「なな、なに言ってるんですか、おじさん、先生に言ってよ」
おやじ 「冷てえ〜なぁ、おら、痛てぇんだで。なんとかして」

先生  「もう少し、僕の話を聞いてください。この病気についてよく理解していただいてから治療に入りましょう」
おやじ 「イテェ〜、先生、分かったからなんとかしてくれや」
先生  「五十肩は、初期には何もしなくても痛みがでる(自発痛)が、だんだん動かすときに痛む(運動痛)だけとなる。特に髪を整えたり、着がえの動作など、手を前方に上げたり、側方に上げたり、回したりするのが制限される。夜間や明け方に痛むことが多く、眠れなくなることがある。 日頃肩をあまり使わない人に多発しています」

おやじ 「そうなんだよ、朝方痛くて、目が覚めちゃだよ」
先生  「原因は、肩関節は筋・じん帯によって支えられています。上腕をぶら下げている筋肉が加齢とともに固くなり、さらに腕をあげる動作時に挟まれて圧迫され、しだいに薄くなっていき、さらに血液の循環も悪くなってくる。そして腱の部分がもろくなり、炎症が起こり易くなってしまうんです」

おやじ 「なるほど」
いちご 「なるほどって、おじさん解ったの?」
おやじ 「何言ってんのぉ〜、おら、青中だで〜」
いちご 「それしか言えないんだから、モゥ〜」

先生  「治療は、痛みが主体の急性期と、運動制限が主な慢性期とに分けて行います。 急性期の痛みは運動痛、腕への放散痛(ほうさんつう)、とくに夜間痛が特徴的で、夜眠れないこともあります。無理に動かしたり運動したりすると症状が悪化するので、この時期は安静が第一です」

先生  「また、肩を冷やすと痛みが強くなるので、寝る前に入浴しよく暖めて保温をすると効果的です。寝る時も軟らかい枕をわきの下に入れて腕をその上に置き、痛くない体勢を保つことが必要です」

先生  「五十肩はこじらすと、半年、一年と苦しむ事が多いので早め早めに、毎日続けて治療するのが早く治すコツです。また事務職など同じ体勢をとることが多い場合は、なるべく意識して体を動かすのがいいですよ」
先生  「その方法として、振り子運動が有効です。まず、体を前方へ90度ほど曲げて、痛みのない腕を伸ばして机の上に置き、上半身の重さを全部預けます。症状のある腕を下げて、アイロンや500グラム〜1キロほどの物を持ち、強い痛みがはしらない程度に5分間、振り子のように色々な方向に動かします。この運動を1日2〜3回、できれば入浴後に行うと効果的です」

先生  「 慢性期は半年から1年くらい続く可能性があります、根気よく運動を続けることが大切です。ただし、半年続けても症状がまったく軽快しないときは肩腱板断裂の場合があるので、ときどきは、診察をうけて、症状や経過を報告してください」

おやじ 「先生、おら、そんなにいたいの我慢できねえやぁ〜、いま、すぐに痛みとめてくれや。たのむでぇ」
先生  「あせらない、あせらない。今から痛みをできるだけ早くとる治療法を説明しますから」

     次回は、早く痛みから解放されるための治療法をお話します。

2004年3月29日(月)
五十肩 肩関節周囲炎 PartV

     おやじは、左肩が痛くて先生の診察を受け説明を聞いているところであります。

おやじ 「イテェーよぉ、先生なんとかしてくでぇ」
いちご 「もうすこし、先生の診察と説明を聞いてから、おじさんに一番あった、治療法を先生が選んでくれるから」
おやじ 「とにかく、この痛み何とかしてくれや」

先生  「すごく、痛そうですね、いままで話した自力で治す方法は、時間と我慢が必要なんですが、こんなに痛がってちゃあ、薬か注射に頼るしかないですね」
おやじ 「今回は、注射いやだなんて言わねえ。先生注射。良く効く注射おねがい」
いちご 「おじさん、あんなに薬はいやだ、湿布はかぶれる、注射は痛いからいやだって、言ってたのに、今回はかなり痛いのね」

先生  「しかたない、本当はあまり使いたくないけど、かなり、痛そうなので、今回は、プラセンタ(ラエンネック)使います」
いちご 「おじさん、ベットに上向きに寝てください」
おやじ 「イテ、イテテテ、こうかい?」
先生  「はい、いいですよ。楽にしてください」・・・肩関節の消毒をします。
先生  「はい、少し、チクッとしますよ。・・・はい、終わりました。どうですか?」・・・プラセンタ(ラエンネック)を関節に注射しました。
おやじ 「アレッ?レレ?痛くねえや、嘘みてえだ」
先生  「これで、ゆっくり、僕の話を聞いてもらえますか?」
おやじ 「おら、治ったからもういいや。先生」
いちご 「ほんとに自分勝手なんだから、おじさん、最後まで先生の説明聞いてください」
おやじ 「おら、青山だ、わがままおやじだ」
いちご 「そんなことは、どうでもいいの」

先生  「整形外科では、急性期は局所の安静や鎮痛剤、非ステロイド製抗炎症薬などの内服薬や外用薬、あまりにも痛みが強いときステロイドの注射などで症状を軽減させます。ステロイド(副腎皮質ホルモン)を使うと痛みは楽になりますが、副作用を考えると、よっぽどのことがなければ使いたくないですね」・・・ステロイドの副作用については別の機会に説明します。

おやじ 「先生、おらに、そのなんだ、ステンドグラス?使ってねえよなぁ?」
いちご 「ステロイド、ステンドグラスじゃないつぅの」
先生  「おやじさんに使ったのは、おやじさんも良く知ってるプラセンタですよ」
おやじ 「以前、膝の関節に注射したやつかい?」

先生  「そうです、プラセンタは美容や、若返りのためだけではなく、このように、関節の痛みや、肩こり腰痛にもすごい効果があります」
おやじ 「スゲーエ、プラセンタってなんにでも効くんだね」
先生  「いま、プラセンタの効果にいろんな大学が研究を開始してます。これからもっと、いろんな分野で使用されるでしょう」
 
     実際プラセンタ(胎盤)の研究は進んでいます。さらなるパワーの発見を期待します


変形性膝関節症

五十肩 肩関節周囲炎

日々の診療日記から整形外科領域の疾患を抜粋しました

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