日本海釣師

5人乗りモーターボートは、日本海にそそぐ川に係留した。
思いもかけず、船釣りを始めることになった。

釣りは、ガキの頃から好きだった。
小学校4年、40センチを超えるなまずを釣った。
『釣った、釣った』と、村中を叫び回った。
その日から、なまずを釣ったその場所に、
雨の日も、風の日も、必ず姿があった。

中学校へは、朝、釣竿を持って登校した。
途中の橋の下に、竿と餌を置いた。
下校。
毎日、釣りをしながら、川沿いに帰った。
秋には、暗くなって竿先が見えなくなってから、家に帰った。


海の船釣りには、魚群探知機とGPSが必需品だ。
が、その船には付いていなかった。
キス釣りしかできなかった。
2年目には飽きた。 

仕事で、魚屋の『たっちゃん』と親しくなった。
船釣りはしたことがない、という。
釣りに誘った。
二人でキスを釣って帰った。
『たっちゃん』が言った。『このキスで飲もう』
二人だけの宴会で、彼が言った。
『おれが売ってる魚より、うめえ』
脳天に、いなずまが走った。
魚群探知機とGPSを買った。


この船に5年乗って、買い換えた。
ヤマハのニューモデルだった
サイズは変わらないが、快適さは飛躍的に向上した。
が、釣果はいつも芳しくなかった。
船のせいではなく、技術のせいか?
帰りには、いつも鮮魚センターに立ち寄った。

鮮魚センターでは、アジやタイを避け、貝やえびを買った。
釣れない釣師の意地だった。
『おらあ、貝のほうが好きだ』と、うそぶいた。
いつのまにか、
得意料理『貝えびざんまい』を看板にするようになった。

2代目 釣り船 YAMAHA SRV17