・・・ 昔 ・・・ 松本から越後へ行く、一人の坊さんが、山道を歩いていました。
衣が木に引っ掛って破け、つくろわなければ、と思いながら、なおも歩いて行くと
広い野原に大きな松の木、根元から清水が湧き出していました。

坊さんは腰をおろし、荷物から針と糸を出して、衣を縫い始めました。
縫っていくうちに、糸がなくなって、何か糸の代わりになるものがないかと、
針を片手にあたりを見回しているうちに、落としてしまいました。

一本しかない針ですから、必死で探しましたが見つかりません。
土の中に入ってしまったかと、一生懸命掘ってるうちに暗くなったので、
また明日探そうと、そのまま木の下で、寝てしまいました。

あくる朝、目を覚ました坊さんは、アッと目を見張りました。
昨日、針を探して掘ったところに水がたまり、立派な池になっていました。
坊さんは、驚いたり喜んだり、針のことは忘れて、また勇んで旅を続けました。

水の乏しい、この村の人達も大喜び。坊さんが落とした針のあとに、できた池だからと
「針後池」 と名付け、池から水を引いて田を開き、黄金色の稲穂が波うつ村になりましたとさ。

(常盤地区に伝わる伝説から)