千曲川、旧豊田村 硲(はざま)の急流。ここには、よくカモが群れている。

30年ほど前、まだ舟カモ猟を始める前の話
斑尾高原、ペンション・オーナーの猟友会員が、雪の中、白いシーツをすっぽりかぶって、
千曲川の川端を抜き足、差し足で歩いて、大量のカモを獲ったという自慢話を聞いた。

よしっ、それだっ!
さっそく、白いツナギ作業服と白い目出し帽を買って来て、銃には白い包帯を巻いた。
全身、白づくめで、あの向こう岸を、抜き足差し足で、忍んで行ったと思ってください。

そーっと、岩かげから覗くと、100mほど先に、いるわ、いるわ、カモ、カモ、カモ。
むひひひ、と腹の中で、ほくそえんで ・・・ 俺は忍者 「白影」 じゃ、見えまい、と、一歩。
一斉に、カモが飛び去った。あとに、白ずくめのあんちゃんが、茫然と突っ立っていた。
鳥の視力は、人間の 「6倍」 とも言われている。したがって、人間が彼らを判別できる
距離だったら、彼らは 「バカな猟師が来たワイ」 とすぐに見破ったのだろう。

そもそもシーツの話そのものが疑わしい。岸から撃ったカモを、大量に回収するのは不可能。
今になって思えば、ペンションの宿泊客に養殖アイガモの 「かもなべ」 を出して、
シーツの話をすれば ・・・ みんな信じて、野生のカモを食ったぞと、感激するだろうな。

おのおの方、猟師の話には、ゆめ、騙されてはなりませぬぞ ・・ 
って、この話は、別だかんね ・・・ と、ゆー、そのあたりが、そもそも、疑わしい!!!
人の話とは、それぐらい信用できかねるものなのであります。『自慢話、聞く度に毎に、大きくなる』

 ※ 「白影」 は 45年前 『仮面の忍者・赤影』 というテレビドラマに出た
この方、牧 冬吉 さん。
凧に乗って登場する。

「隠密剣士」 では、
「霧の遁兵衛(きりのとんべえ)」
役で活躍。
15年前、67才で没。