狩猟解禁日

朝から雨。雨にぬれてまで猟師をしたくない。
で、秋と冬の境目を探しに、車で北峠へ。

北峠は雪だった。
そぶの池。
なぜか、今年は水量が少ない。

たしか、彼女のうちはここからちょっと下ったところだ。
しばらく探すが、行き着けない。
ここの住民が村を去って早や40年。
歴史は、やぶの中に隠れてしまった。
と、目の前を、ゆうゆうとカモシカが通り過ぎた。
こっちを振り返って、にやりと笑った。
ような気がした。
こっちも、にやりと笑って答えた。

結局、彼女の家の跡は分からなかった。
※北峠は富倉峠のすぐ北側にあり、開村は江戸時代初期。関所があった富倉峠を通りたくない旅人が通ったのではないかと歴史家
  は推測する。昭和48年解村。6戸21名。学校は、外様小学校北峠分校。校舎は5年程前まで現存したが雪で倒壊して今はない。
  跡地には、校名が刻まれた石柱と、奉職者名を刻んだ石碑がある。分校の子は、中学生になると外様中学校へ歩いて通った。
  片道1時間半以上。冬は、元役場建物の寄宿舎ぐらし。同級生の「彼女」、父親は猟師の大先輩。私が猟師になってから10数年、
  北峠の「あけび窪」という小さな池へ初猟に通った。その帰り、獲った鴨を手土産に、囲炉裏の火明かりで昔語りを聞いたのだ。