昨日の「小股」の話、いまいち納得できん、とお叱りを受けました。
そうですよねー!
私も、杉浦女史の本を斜めに読んで書いたもんで、自分でも、いまいちでした。
というわけで・・・
じゃーん、「杉浦日向子のぶらり江戸学」から「小股」に関しての部分、原文のまま転載いたします。
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江戸の脚線美はS字型

江戸のキーワードをチェックしておきましょう。これは江戸にしかない、上方にはない美意識の一つなんですが、女性に
関して使う言葉で、「小股の切れ上がった」というのを、よく耳にすると思います。使い方としては、「小股の切れ上がった
いい女」。あんまり「小股の切れ上がった悪い女」というのは聞かないんで、そこが切れ上がってると、いい女だったらしい
んです。で、この「小股」というのはどこのことで、どう切れ上がってることをいうのか、これは古来から論議されているとこ
ろで、いろんな説があるんです。

一つには、うなじの部分。髪の毛をアップにすると、うなじの、えり足のところが富士山の形になりますね。そこがきれいに
切れ上がってる人のことを言う。あるいは、目が涼しく、切れ長な目である、などなどさまざまな説があるんですが、私の
師匠、及び私の周りの人たちは、こういう説をとっています。ちょっと、「小股の切れ上がった」絵を貼りますね。(とホワイト
ボードに下の浮世絵を貼る)

これは江戸中期・・歌麿より一世代前のころですが・・そのころの美人画家、鳥井清長の美人画です。この、左はじの女の人が切れ上がってるんです。どういうふうにご覧になれますでしょうか。(膝からもものへんを指しながら)だいたいこのあたりが切れ上がってますね。

「小股」の「小」というのは接頭語で、「小股」というのは「股の付近」なんです。股に付属する部分ということで、だいたい足の付け根のことを言います。どんな足か、この人のような足です。と言っても、この絵ではちょっとわかりにくいんで、詳しく説明しますと、「弦を張った弓のような足」なんです。こう言葉で言っても分かんないと思うんで、真横から強調した絵を書きます。(ホワイトボードに絵をかきながら)
 
太ももは、細くしなってます。膝小僧があって、これはちょっと極端な感じで描いてますけど、つまりこういうふうに、ももから膝、そして膝から下へ、「S字型」を描くような格好の足なんです。全体的には、かなり細いです。で、正面から見ると、多少O脚になっています。ちょっと、聖子ちゃんの足のような、O脚型。真っすぐ立ったとき、左右のくるぶしのところはちゃんとつくのに、膝はつかないという。これで、真横から見るとかすかにS字型を描いている。こういう足の人がその上に着物をまとった場合、とても色っぽいんですね。
これが例えば、西洋式の、よく劇画に出てくるような、足首がキュッとしまって太ももが充実してて、真正面から見ると、太ももの間があかずにきっちりくっつくような(と、ホワイトボードに左の図を描く)こういう足では、着物をまとったとき、太もものあたりが暑苦しいんだそうです。

もものところに隙間があって、「郵便だよー」ってここに文が入るくらい(笑)の間があったほうが、布をまとったとき、なんとも言えず美しい。しかも、歩いたとき、このS字のラインが、着物のすそをたくみに開くような動きをするわけです。きっと、こう(西洋式に)ムチムチしてると、すそがなかなか開かないで、なんかモタモタすると思うんですけども。だから、こういう(S字型の)足型の人がさっそうと歩くと、この絵のような情景が起こるわけです。

これ、かなり膝の上の方まであらわになっていますが、これは浮世絵の誇張ではなくて、このころの着物の仕立ては、合わせが浅かったんですね。だから、ちょっと歩いたり風が吹いたりすると、膝上20センチぐらいまでまくれてしまったんだそうです。ですから、おしゃれな女の子は、内股の近くまでおしろいを塗ったそうで、おしろいを非常にたくさん使わなくちゃならなかった。そのくらい足には気を遣ったそうです。

いまのように、足首が細くなくちゃいけないとか、そういうことはなかったんですが、このS字型とある程度の細さで、ももに隙間のある、こういう格好の足がいいとされていました。

これ、もう一つ秘伝がありまして・・まあ、「秘伝」と言うほどのものでもないんですけど、この足型の人が正座したときに、膝枕がちょうどいい高さになったんだそうです。西洋風のムチムチタイプの足だと、お肉が充実しすぎてて、枕が高くなりすぎて、首がコル。ですから、膝枕をしてくれるような女性を持てる男性、つまり甲斐性のある男、旦那衆というようなお方は、このS字型のO脚の足に、非常にこだわったんですね。

こういう足の女性に膝枕してもらって耳をほじってもらいたい、というのが男冥利に尽きるというか、男にとって夢の一つであったそうです。この、着物をまとったときに立ち姿がいいという、「小股の切れ上がった」というのは、非常にわかりやすい価値観だと思います。
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いかがでした? これは、話の種として使えますねえ。
しめたっ!女性に手相鑑定ならぬ「小股鑑定」で接近しようと考えたおとーさん・・・あなた、長生き、できますよ!