「職業は?」と聞かれると返事に窮する。
サラリーマンだった時は躊躇なく答えられた。
今、正確に言えば「無職」だが、イメージが悪い。「容疑者 何某、無職、住所不定」の印象。
日本では、職業はその人を「評価」する基準になっている。
したがって、「無職」は「一人前ではない」と解されやすい。
これまで長年職業人として生きてきた。退職して、職業は無くなったが、
年金でそれなりに生活ができているから、「無職」ではあってもりっぱなものだと自分では思う。
しかし、「無職です」ということには抵抗がある。

先日、火事があった。やじうまで近くまで行ったら、どうも知人のたき火が原因らしい。
本人との携帯のやりとりで判明した。で、警察官にその旨伝えると、
「あなたの名前は、住所は、職業は・・」と、たたみかけられた。つまり、事情聴取。
で「無職」と答えるところまで来て「むむむ、むーっ!」。もう少しで窒息しそうになった。
「無職」と言うことに慣れていない。そこで考えた。
子供達も適齢期だ、いつどこで「お父さんの職業は」と聞かれるかもしれぬ。
また、今年は国勢調査もある。至急、なんとかせにゃならん。

最も実態をあらわしているのは「年金生活者」。
だが、これは職業とはいわないらしい。
職業は「生計を維持するために、人が日常従事する仕事」(大辞泉)だという。
要するに「主たる生計の源」でなくてもいいが、「仕事」それも「収入を伴う」必要があるということだ。
なるほど、なるほど。また、「収入」は必ずしもお金である必要はなく「現物」だっていい。
それならば、家庭菜園で野菜を作って自家消費するのも、日常従事するなら「農業」。
魚を釣って来て、これを晩酌のつまみにするのだって、日常従事するならば「漁業」だ。
山から木を切って来て、薪ストーブの薪を作るのも、日常従事するなら「林業」か。
そういえば、「職業は農業・漁業・林業」だと言っていた元校長先生がいるなあ。

で、私はどうすればいいか。畑はあるが草刈りしかしていない。
収穫がないから農業ではない。田んぼは貸しているので「不動産業」。
ほかに、収入があるのは「電気技術者」「芸人」「漁協役員」「板前」「猟師」「土木建設業」。
みんな「見習い」みたいなもんだが、技術の良し悪しは、職業とは無関係だ。
ところで、これらを一言でいえば何業?

フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』の記述にこういうのがあった。
『特定の企業や団体、組織に専従しておらず、自らの才覚や技能を提供する人を
フリーランサーと呼び、
一般的な職業分類では個人事業主や自由業に該当する。』
ほほう、そうなの?いいじゃない。それでいきましょう。
ということで、わたくし、本日めでたく『脱・無職』宣言をいたします。