陶芸家 牧田博義氏作

うんと若い頃、ちょっとだけ茶道教室に通った。
姉の友人が長野市で裏千家の教室を開いた。
「さくら」を頼まれて、いやいや通った。

何回か通ってるうちに、若い女性がたくさん来るようになった。
もう「さくら」はいらないだろうと、やめてしまった。
今では考えられないが、当時はかなりの硬派だった。
女子供(おんなこども)と一緒にやってられるか(失礼)と思ったのだ。

それから、30年。
久しぶりにお茶を点てたいと思った。
 
 
ここ飯山地方では、冬になると野沢菜を漬ける。雪の中の楽しみは、野沢菜を食べながらお茶を何杯も飲む。
このお茶を、抹茶で楽しみたいと思ったのだ。しかし、抹茶はでかい茶器の底にほんのちょっとだけ。それも一気飲みでしょ。
なんで、飲み干さなきゃなんねんじゃー。おら、ちびちび何回にも分けて飲みたいし、何杯もお代わりしたい。
で、長野のお茶屋さんを回った。

「一度に何人分かの抹茶を点てて、それぞれの茶碗に注ぐような、茶器はないですか」
あるわけーねーよなー。ねーなら、作るっきゃねえ。というわけで、作ってもらったのがこれ。
注ぎ口がついた片口のような茶器で人数分のお茶を点てる。ぐい飲みのでかさの銘々茶器に注ぎわける。で、何杯もお代わりする。
抹茶をたらふく飲んで、野沢菜をたらふく食うのだ。
どーだ、これがおらっちの茶道だー。
というわけで、こんな「邪道」ですが、冷やかしにお立ち寄りください。