最近、相次いでこんな相談を受けた。

「高齢になった親の口座から貯金がおろせなくて困っている」
いずれも、農協に口座があって年金などが振り込まれている。家族でも払戻しに応じてくれず、本人を連れてこいと言ってるらしい。100才に近い高齢で施設に入っている、自分の扶養家族であると説明しても、一切応じないというのだ。なるほど、困ったものだなあ。こんなとき、どうしたらいいんだろうか?

まず、最初にお断りしておきます。私がホームページに書いたものを全部読んでいただくと、あちこちに矛盾したことを書いているのがばれてしまいます。だから、ホントは書きたくないんだけど、同じ場面に遭遇してしまう方を一人でも減らしたい。現に今、困っている方のお役にたちたいと思うので、あえて書きます。もっとも、人生なんて大きな矛盾にほかならない。人間みな必ず死ぬ。毎日、この世との決別が1日ずつ迫っている。にもかかわらず、努力して生きている。どうせ死んじゃうんだから、努力なんかしたって無駄なのに・・・、とは誰も言わない。そこが、みんな偉いよね!
あっ、ちょっと脱線しちゃった。

その矛盾する話・・・
『高齢になっても家族に大切にされるためには、自分名義貯金などが大切だけど、決して本当のことを言ってはいけない』そうです、大切なことです。ではありますが、今回の事例から言いますと『家族が本人に代わって貯金を払い戻しできるようにしておかないと、直接面倒をみる家族の負担だけが嵩んでしまう。』幸いそれを、凌ぐだけの経済力があったとしても、その本人が亡くなった場合、残った資産は相続人全員に権利があります。さあ、負担した費用は、すんなり別会計とできますか、その時になって「こんなはずじゃあ」と言ってもはじまらない。兄弟げんかもしたくない。それには、事前の対策が必要です。

ものにはタイミングというものがあります。ある日突然「おやじ、あんたがボケちゃってからじゃ間に合わねえから、俺に通帳とはんこ渡せ」と言ったらどうなるか。いやー、言ったことねえからわかりませんが、自分が言われたら・・・考えただけで、血管が切れそうですなあ。やっぱり、具体的事例が身のまわりにある時が、グッドタイミングです。「誰々さんちでね、じいちゃんの貯金がおろせなくて困ってるんだって」

まず、年金振込口座です。ご本人がボケないまでも、足腰が弱って払戻に行けなくなることもあります。そうなる前にキャッシュカードを作っておきます。多くの銀行では「本人カード」とは別に「代理人カード」が作れます。このカード、使う使わないにかかわらず、保管は本人に任せることが肝心です。「じいちゃんが、しっかりしまっておけば、誰も貯金をおろせないんだからね。」と言っておきましょう。これで、じいさんが寝たきり老人になっても、安心です。あっ、そうそう、暗証番号、しっかりメモっておかないと、意味ないですよ。

次に、定期貯金など。これは委任状で払戻せる銀行もあります。たとえば、郵貯銀行では本人に電話で確認できない場合は取り扱いできないとしていますが、逆にいえば、寝たきりでも電話に出られれば可能だってことです。個々に相談してみる必要があります。

うちはもうボケちゃってるから・・・と落胆することはありません。成年後見制度というのがあります。今回相談された方には、この方法をお勧めしました。費用は概ね10万円くらい。書類的には、生前に相続手続をしておくようなものでしょうか。なかなか大変ではありますが、背に腹は代えられません。
それにつけても、『転ばぬ先の杖』ですぞ。

そういう、あんたはどーなんだって?
はい、うちの親はまだボケてませんし、自分で動けます。が、準備はすっかり整っております。どっちかと言いますと、私の方が危険性が高いし影響も大きいので、現在、こちらの準備を進めているところであります。

しかし、自分がボケたり、寝たきりになったり、死んじゃった時の用意をするってのは、変な気持です。逆に我が家族は、この準備万端爺がうーんと長生きしちゃたらどうしようと、そのことで戦々恐々のようであります。
これって・・・   『過ぎたるは、なお、及ばざるが如し』 ???