ここが湯滝の急流だ。

いつだか忘れた。たぶん、20年くらい前だと思う。
同期のT (奥穂高岳を一緒に登った愛すべき男) カヌーで千曲川を下りたいと言
てきた。
そこで、飯山から立ヶ花橋まで舟で2時間ほどさかのぼって、列車で来た彼と落ち合った。
彼は、持参したカヌー(ファルトボート:布とフレームの組立式)を組み立てていた。
今日が、カヌー初めてという。 立ヶ花橋から飯山中央橋までの急流を先導した。
更に彼は、湯滝橋まで下り、そこで上陸してカヌーを折り畳み、上境駅から飯山線で帰るという。
一瞬、大丈夫かと思ったが、ここから湯滝橋までは流れがゆるやかだ。彼も、のんきに
「だいじょぶ、だいじょぶ」 と言う。 「湯滝より下に行くなよー」 と言って、別れた。

翌日、電話が来た。

「あのさー、湯滝の急流で転覆してさー、カヌーと一緒に流されちゃってさー ・・・
川岸の田んぼにいたおっさんに助けられてさー、パンツ借りて帰って来たよー!」

「えーっ!」  と絶句 ・・・

そのパンツ、その時おっさんがはいてたパンツなのか、ちゃんと洗って返したのか、
いまだに、確かめる勇気はない。